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タイトル:   2024年5月16日「横須賀・猿島散策」実施報告書

ウオーキングの会 2024年5月16日「横須賀・猿島散策」実施報告書

当日は夜明け頃までかなりの風雨でしたが心配していた猿島フェリーの欠航もなく、曇天ながら日差しがない分暑くもなく、適度な海風に吹かれて初夏の散策にはお誂え向き(?)の天気になりました。 猿島散策は12年前にも行い参加2度目のメンバーもいましたが、それでも19人の参加がありました。

メンバー  フェリー

猿島は南北480m、東西250m、周囲1.6km、最高標高約40mの東京湾で唯一の自然島です。

猿島のマップ

現在「要塞」の遺構として残っているのは旧陸軍の要塞砲関連施設跡と、旧海軍移管後に設置された高角砲台・同指揮所などです。明治14年~17年に東京湾に侵入する異国船打ち払い(?)のため主要な要塞施設が建設されましたが、想定した事態は一度もなく、時代を経て航空機の発達で空襲の脅威が増してきたので昭和2年に海軍の管理に移行し、昭和20年8月まで高角砲(高射砲)の陣地になっていました。
現在は横須賀市管理の公園として桟橋や島内周遊路がよく整備され一般に公開されています。入園料:@¥500。
ところで、猿島と云っても猿はどこにもいません。その名の由来は日蓮が13世紀中頃に布教のため房総から三浦半島に船で渡った際に悪天候に見舞われ当時「豊島」と呼ばれていた猿島に漂着、そこに大きな白猿が現れて現在「日蓮洞窟」と呼ばれている島北端の洞窟に導かれて嵐の難を逃れた、という言い伝えによります。
今回はかつての要塞砲、高角砲台、兵舎、弾火薬庫などの軍施設跡を見ながらこれらを結ぶ塁道(るいどう。塁とは土を積んだ陣地、小砦などの造成物の事)」を散策するコースです。見どころは旧軍施設跡、頂上広場からの展望と切通しや、今や「愛のトンネル」と名付けられて人気のトンネルの異空間的雰囲気やレンガ積み壁の造形美です。
記念艦三笠隣のフェリー発着場を出航、約15分で猿島桟橋に到着、公園管理センター/案内ガイド詰所前広場でコース概要を紹介して散策スタートしました。
その塁道に入ってすぐ正面に建つのは「電気燈機関舎」。これは島の頂上に設置した探照灯の電源になる発電所でした。 塁道を進むと凝灰岩切り石組壁の切り通しが右にカーブして行きます。そのカーブコーナーの壁に2・30個の弾痕がありますが、これは昭和20年8月30日猿島接収に来た英軍が威嚇発射した機銃弾の痕だそうです。停戦はしたものの英軍も緊張していたのでしょう。
カーブの先に続く切通しの崖に横穴を掘って砲台要員の兵舎、弾火薬庫、揚弾井(弾薬を砲台に揚げるためのツルベ井戸式の人力巻上機のシャフト)などを設えた遺構が並んでいます、施設遺構部分はレンガ仕上げ、それ以外の崖面は凝灰岩の石組になっています。
これらの施設跡は遺構保護のため施錠され、ガイド(@¥600)が同伴しないと内部には入れません。

塁洞を行く

さらに切通しを進むと島の奥の第1砲台下に差し掛かり、ここを右に巻いて続く塁道の先にちょっと長めのトンネルが見えてきます。これが「愛のトンネル」ですが、開削出来るところは切り通し、高い急壁になりそうなところは崩落を避けるためにトンネルにしたという極めて実際的な判断と設計に基づいているのです。
トンネル出入口面と内壁はレンガ造り。レンガの積み方は長手面・小口面を交互に並べて積むのがフランス式、長手方向に並べた層の上に小口方向に並べて積むのがイギリス式です。
猿島では切通しの要塞施設部分の壁、トンネル内壁はフランス積み、猿島以外では富岡製糸場の建物もフランス式レンガ積みとの事です。最初に見た電気燈機関舎の煙突の一部はここでは珍しいイギリス式だそうです。
レンガ積み構築物のレトロな雰囲気や仄暗い感じ、音響効果にインスパイアされるのか、コスプレ撮影会やアニメ「ラピュタの城」などの場面背景に利用され、更には「鬼滅の刃」登場キャラクター、胡蝶しのぶの衣装の蝶柄:アサギマダラが次に訪れる砲台跡の周辺に生えている有毒な鬼女蘭に卵を産み付け幼虫はこれを食べて成長する事など、意外な繋がりと奥深さを持っているという話を下見の時にガイド氏から聞きました。軍事要塞建設当時は予想もされなかった場に変貌しているのは平和ニッポンを象徴している様な気もします。

「愛のトンネル」を出て更に進んで行くと日蓮洞窟と第1砲台跡(のちに高角砲陣地跡)の分岐に出ました。左側の日蓮洞窟へ降りる道は現在通行止めで降りて行けません。ここで先ほどの猿島の由来を紹介し、第1砲台跡に進みます。分岐から数十歩先に砲座跡、次にやや大きめのこれも砲座跡が一つ、二つと現れて来ました。もちろん要塞造営当初の要塞砲も、その後に据えられた高角砲も撤去され、現在はコンクリ造りの円形砲台跡だけが残っているばかりなので、大砲が浦賀水道や横須賀軍港上空を睨んでいる物々しい光景を想像するのはちょっと難しいかもしれません。
砲台跡を通り過ぎた先は一寸した急階段が続き、ようやく息が弾んでくる頃に猿島最高標高の頂上広場にたどり着きます。登り切ってすぐ右側にあるのは、旧陸軍要塞当時の探照灯を撤去した後に建てられた旧海軍の高角砲射撃指揮所ですが、名称から受けるイメージよりずっと小さく白塗装も剥げ落ちた廃墟にしか見えません。
頂上広場でしばらく休憩し眺望を楽しんだ後、他のお客さんを案内していたガイド氏に我々の集合写真を撮ってもらいました。

頂上広場

と、ここまでが今日の散策コースの見どころスポットで1時間少々で回ってしまいました。あとは来る時に通った砲台下の塁道に下ってフェリー桟橋に戻るだけです。ちょっと急げば予定より1時間早いフェリーに乗れそうでしたが、雨上がりの下り道は危なっかしいところもありそうだし、急ぐ旅でもないので管理センター前のポートデッキで次のフェリーをゆっくり待つことにしました。

フェリーを待つ 帰り

フェリー桟橋から元来た道を京急横須賀中央駅に戻り、ここで解散。そのまま帰路へ、あるいはお約束のビール&ランチのお楽しみへとそれぞれ別れて終会となりました。
12年前の「猿島」はヴェルニー公園散策や記念艦三笠見学、途中でランチタイムも含むたっぷり半日のプログラムだったので今回は少々物足りない感が無きにしも非ず、ですが、メンバーの「成長」に合った適切な企画という事で、これでよかったのかも・・・。

次回は目黒自然教育園 6月11日(火)午前10時 JR目黒駅東改札口集合
多数のご参加をお待ちしています。

文責:中山